出展レポート|台湾・之間 2026
燕物産株式会社は、台湾・台北の松山文創園区にて開催された「之間-看見 IN BETWEEN VISIONS – 2026 燕三条工業與工藝文化交流展」に初出展しました。
貴重な機会となった本イベントについて、出展レポートをまとめました。
長文となりますが、是非お付き合いください。
「Art of Everyday Use(使うことの芸術)」をテーマに燕三条地域の工業・工芸文化を紹介する国際的な交流展で、2026年は第3回目の開催、18企業が参加。かつて台湾各所のホテルで弊社カトラリーが使われていた時代から長い年月が経ちました。もう一度、自分たちの手で市場と向き合ってみたい。その思いが、今回の出展の出発点でした。
①海外初、ユニバーサルファクトリーの実施
今回の出展では、弊社が独自に開発したオーディオガイド型プログラム「ユニバーサルファクトリー」を海外で初めて実施しました。時間・場所・性別・国籍を問わず、誰もが燕物産のものづくりに触れられることをコンセプトに開発したこのプログラムは、QRコードを読み取り日本語・英語・中国語(繁体字)から言語を選択できる設計で、工程見本に触れながら音声ガイドを通して製造工程や現場の背景を学ぶことができます。
「見る」+「聴く」+「触れる」を掛け合わせた体験により、言語の壁を越えて多くの来場者に受け入れられました。
体験後のアンケートでは、ノベルティ200個の配布に対して198名から回答が得られました。満足度5段階評価で「5」が75.3%、「4」以上の合計が94%。購買意欲の平均スコアは4.62/5、燕三条・工場訪問への関心スコアは4.64/5。そして任意記入の自由記述欄に、41件ものコメントが寄せられました。必須項目ではないのに、これだけ多くの方が言葉を残してくれた。
その事実が、何より嬉しかったです。
台湾の方々のスマホ操作への許容度の高さ、アンケートに喜んで応えてくれる姿勢、見知らぬ同士でも自然に教え合う様子——。
日本ではなかなか体験できない光景が、そこにはありました。
▶寄せられたコメントの一部をご紹介します。(原文ママ/日本語訳)
・「非常感謝介紹!非常有趣的歷史,小小的物件有大大的精神很感動」
(ご紹介ありがとうございます!とても興味深い歴史で、
小さなものに大きな精神が宿っていて感動しました)
・「餐具非常精緻 對於使用者的使用情境非常了解 很優質的作品產品」
(カトラリーがとても精緻で、使い手のシーンをよく理解している。とても質の高い作品です)
・「謝謝堅持帶來這麼好的產品」
(こんなに素晴らしい製品をつくり続けてくれてありがとう)
・「能看到湯匙的一生很有趣」
(スプーンの一生を見られてとても面白かった)
・「希望有機會能跟台灣品牌合作」
(いつか台湾のブランドとコラボできる機会があれば嬉しいです)
・「応援してます📣」
②国立台湾師範大学との校外学習・授業連携
出展期間中、国立台湾師範大学アートコミュニケーション学部の学生27名による校外学習を受け入れました。陳明秀教授の引率、現地コーディネーターの宇樂エンターティメント・蔡 晴宇さんの連携を経て、計30名の体験となりました。工程見本と繁体字の会社紹介資料を使って歴史や理念を説明したのち、物販ブースへ移動し、Smartシリーズを実際に手に取ってもらいました。さらにユニバーサルファクトリーを班ごとに実施し、聴覚と触覚を通じた体験を重ねてもらいました。
また別日には、蔡さんが推進する「百年プロジェクト」——日本百年伝統工芸を現地に伝える活動——の一環として、国立台湾師範大学美術学部の社会人大学院授業でも燕物産の歴史とあわせてユニバーサルファクトリーを実施していただきました。燕物産のYouTubeチャンネルの映像と工程見本を組み合わせた授業のなかで、学生から「カトラリーの一生ですね」という言葉が出てきました。こちらが用意した言葉ではなく、体験から自然と出てきた言葉。それがとても印象に残っています。
記念品として配布したいちごスプーンをきっかけに、食文化の話が広がりました。台湾ではいちご産地が少なく甘い品種も少ないこと、日本のいちごの甘さへの驚き、砂糖と牛乳を混ぜて食べる文化への興味——。カトラリーを入口に、食という共通の関心事が国境を越えてつながっていく感覚がありました。
学生から最初に飛んできた質問は、技術や製品の話ではありませんでした。「お父さんのVisionと、あなたのVision。どう違うの?」——。270年以上続く家業を継ぐ者として何を目指すのか。その問いに向き合いながら、「What is Smart?」についても言葉にする機会となりました。
▶URL:国立台湾師範大学
③サテン仕上げの卓上研磨機ワークショップ
日本から卓上研磨機を持ち込み、洋食器製造工程の一つであるサテン仕上げを体験するワークショップも実施しました。スタッフへの無料開催を含む計21名が参加。均一に美しく磨くことの難しさや、仕上がりに影響する繊細な感覚を通じて、ものづくりの奥行きを感じてもらいました。
言語の壁を心配していましたが、むしろ見様見真似で試行錯誤することを楽しむ参加者が多く、ひたすら30分磨き続ける方もいました。研磨経験のあるベテランの方は、両手でスプーンを差し出しながら教えを乞い、「先生」と呼んでくれました。その謙虚な姿勢に、こちらが感動させてもらいました。スコッチバフを購入したいと言ってきた青年、想い出になるオリジナルカトラリーをつくりに来たカップル——。「ナイフは切れる、フォークは刺さる、スプーンは口にやさしい」というカトラリーの基本を伝えると、驚きと納得の反応が返ってきました。この体験は、国を越えて通用する。そう確信した時間でした。
④台湾設計研究院からのインタビュー
台湾設計研究院・地方創新組プロジェクトマネージャーの張 懿(Chang Yi)さんから、弊社専務取締役・捧へのインタビューの機会もいただきました。産地におけるオープンファクトリーイベントの運営実態や、地域企業としての課題について語り合うなかで、気づいたことがありました。台湾でも日本でも、後継者不足・価格競争・企画運営の負担——産地が抱える問題は、驚くほど共通していたのです。
張さんは、2019年にスタートしたT22デザイン振興地域産業プログラム(T22-Revitalization program with regional characteristics design)のプロジェクトメンバーとして、産業のイノベーションや後継者問題に長年取り組んできた方です。鶯歌、花蓮、北投、彰化など台湾各地で展開し、現在は台中でも進められているこのプログラムは、地域産業の持続可能な発展を目指すものです。国が違っても、産地が抱える課題の本質は変わらない——そのことを、張さんとの対話があらためて教えてくれました。
▶ 張 懿さんからは、以下のコメントをいただきました。
「産地における公共的な取り組みは、台湾でも日本でも決して容易なものではありません。捧さんとの対話を通じて、先人たちが築いてきた産地の基盤に対する深い敬意と感謝の念を強く感じました。同時に、燕物産の11代目として、5年前にコロナ禍を契機に銀行から家業へ戻られた決断は決して偶然ではなく、これからの変化に向き合う覚悟の表れであると感じました。」▶ URL:台湾設計研究院
台湾の市場で、感じたこと
食は文化を越えて、共通の関心事です。そこに触れることができる製品としてのカトラリーのポテンシャルを、改めて肌で感じた出展となりました。
「私がデザインした」と伝えると、目を輝かせて真剣に意図を理解しようとし、「かっこいい」「美しい」と反応してくれる。日本人よりも大きなリアクションと旺盛な好奇心——。自分が企画・開発したカトラリーが国を越えて人々の手に渡り、感動してもらえたことは、素直に自信になりました。
学生から問われた「お父さんのVisionと、あなたのVision」という問いは、まだ答えの途中でが、台湾で過ごした時間は、その問いを抱えながら前に進む理由を、少し増やしてくれた気がしています。
燕物産フィールドノート、次回もお楽しみに。
最後までお読みいただきありがとうございました。
①オーディオガイドを体験後に再度ブースで製品をじっくりと見る方々も。
②国立台湾師範大学との校外学習・授業連携 写真提供:宇樂エンターティメント
③卓上研磨機でのワークショップ状況 写真提供:燕三条貿易振興会

何重にも人だかりができ、たくさんの方にお手に取っていただけました。

























